前回のつづき、理性の声5の回想で語られるお話が今回の物語。世界の果てに辿り着いたウィッチャー一行。「たくましく実をつけ、よく育つ」と言われる肥沃な土地とは…?純潔の「アエン・シーデ」たちと出会い、豊穣の理由を理解する回
Netflix・1stシーズン 第2話「4マルク」で映像化されています。あわせてお楽しみください
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「世界の果て」原作小説ウィッチャー
舞台は「下(しも)ポサダ」で別名<ドル・ブラサンナ=花の谷>
地図は載せていますが具体的な場所は地名が載っていないのでわかりません。わかるのは青色山脈そばのエイダーン領ということ

本文解説
厳しい冬までに仕事でお金を貯めたいゲラルト(とダンディリオン)。上ポサダで厄介な怪物の話を聞くも…この場所でウィッチャーの出番はないと別の地域へ移動しはじめる
ダンディリオン「ゲラルト、人々が自分たちで作りだした怪物を信じるのはなぜだ?」
ゲラルト「人間は怪物や奇妙な生き物を作りたがる。そうすれば自分たちが怪物よりましな存在だと思えるからだ。そう思うと気分がいい、そう思ったほうが生きるのが楽だ」
【あらすじ】
上ポサダで二人の様子を伺っていた下ポサダの住民がウィッチャーに仕事を依頼する。その内容はいたずらを繰り返す「デベル」を追い出してほしい、必要な金は払う、だがなにがあっても決して殺すな、というもの。「始末したほうが…」と言うウィッチャーの意見を頑なに拒否する理由は意外なものだった
登場人物
【お馴染みの二人】
ゲラルト:今回珍しくエルフの若い女の子を頭突きで顔面血まみれにしています。相棒ダンディへの愛が強かったのだろうか。詳しくは書かないので気になったら読んでみて欲しい
ダンディリオン:大体はコイツのせいで面倒ごとに拍車がかかる、存在感の強さがウリ。いいから静かにしてろって
【村人】
ネトリー:デベルに悩まされ解決できる人材を探していた。村人その1
ダン:下ポサダの長老
デベル(ウィロワーまたはシルヴァン・デビルとも):2メートル半ほどの背丈に突き出た目、ヤギのような角に髭で下半身は暗赤色の長い毛におおわれる。「アク、アク」が口癖で非常に賢い。ダンディリオンから「デビル」と言われてしまう
白髪の老女と金髪娘リル:村で尊敬される魔女とその弟子のようだが…
【エルフたち】
ガラル:トルク(デビル)とやり取りをする黒髪長身エルフ
トルヴィエル:若い黒髪の女エルフ。非常に攻撃的でゲラルトに凹される
ヴァナダイン:あまり台詞のないエルフの男
フィラヴァンドレル:白髪の年長風エルフ。銀の塔のフィラヴァンドレル・アエン・フィドヘイル。白い船フェリオーン家出身
ストーリー
「ひとつだけ確かなのは…このデビルはバカではないってことだ」
麻などの特殊な植物のそばに潜む害獣(魔法に対し強い霊気をだしているため呪文が効かない)に驚きを隠せないゲラルト。どんな害獣なのか見に来た二人、無事遭遇するもダンディリオンの間抜けな対応で怒らせてしまい即退散となる
ほうほうのていで村へ戻ると、村人から白髪の魔女とその見習いリルを紹介される。老婆の手元にある分厚い本をウィッチャーに渡すリル。初期ルーン文字に驚くダンディリオン、害獣対策が書かれた偉大な本を「文字も読めないのにどうやってこの本を使うのか」問いただす
村人「最長老の女は、土に還るときが近づくと若い者に自分の知っていることを伝える(口伝ということ)」
適当な箇所を開き説明を求めると正しい解説をする老婆。「では、これは?」
老婆「ウィッチマン…ウィッチャーとも呼ばれる。呼び寄せるのは非常に危険だが、やむを得ない。くれぐれも気をつけるべきは…」
ゲラルト「そこまででいい」
ダンディリオン「続けてくれ、おばあちゃん」
老婆「気をつけるべきはウィッチマンに触れぬこと。疥癬がうつるかもしれなから。また娘たちは隠すべし、とんでもない好色で…」
一同大爆笑
その後デベル対策に書かれていた内容を確認すると正確に実行していないことが判明。詰問するゲラルトに無言で見つめ返すリル。なぜか身体に寒気が駆け抜けるゲラルトは声を荒げてしまい…老婆とリルを部屋からしめだすダン長老
デベルのいたずらが悪化し、ごっそりと穀物を盗むようになったこと。食料を隠し鍵をかけたらデベルが腹を立てたので村側はやつに制裁を加えようとしたこと…それをリルが婆さんを使って止めさせた、と。あの娘は「予言者であり賢者」で逆らえないんだと言いだす
村では女予言者の言うことは絶対で際限もなく信じる。領主側にとっては非効率にうつる行動もでてくるため対立を招くやっかいな存在だった。デベルのせいで納める年貢が減り税収官に悩まされた村人はウィッチャーを雇う許可をリルに求め、このようになったと。その女予言者=リルの望みは「どんなものも傷つけるな」
「デベルは非常に珍しく賢い種族なので、殺す気はない。俺の行動規範が許さない」デベルと対話に向かうゲラルト。しかし害獣と「自分がされたくない事を人にするな」ゲームをしている最中、何者かに襲われ意識を失う(このゲームの説明は難しいのでカット)
気づけばダンディリオンと2人縄に縛られ、デベルはエルフと密談中。ウィッチャー世界の歴史に関わってくることですが、この地を人間に追い出されたエルフは貧しい土地でひもじく暮らすはめに陥っていた。みかねたデベルが穀物や耕作の知恵を人から盗みエルフに与えていたのでした
青色山脈はかつて華々しく栄えたエルフの都市『ロック・ムイン』『エスト・ヘムレト』の廃墟がある。元々エルフは人間同様別世界からやって来た種族とされている。2500年ほど前、彼らは白い船から大陸におり立ち入植をはじめたとされている。今作のエルフには白い船の一族が出てきます(人物紹介参照)
キレ散らかす女エルフ・トルヴィエルがゲラルトをフルボッコにし、ダンディリオンの楽器まで破壊。友人の顔面蒼白っぷりにブチ切れたゲラルト、本気の頭突きを喰らわせて女エルフ沈黙。仲間の男エルフがナイフで反撃するそのとき、白髪のエルフ・フィラヴァンドレル登場
エルフは人間に比べ長寿だが「若い時」しか子供が産めない。この若い女エルフがイライラしてるのは栄養が足りないからなのか、相手がいないからなのか、産んでも育てられない環境だから自重してイラついてるのかよくわからなかった。しきりに「時間がない」というエルフたち。君たちの若い時っていつなのよ…
「飢えている、絶滅の危機に瀕している。それでもわれわれは生き延びたい」人間への文句や蔑(さげす)みを散々放った後、ゲラルトはウィッチャーとして人間と共存している「共存と相互理解、それがおまえたちの唯一の希望だ」と提案する
おれは「違うこと」を鼻にかけ、得意がるのをやめた。それが「違うこと」に対するみじめな盾だとわかったからだ。何かが変わり、太陽が違うように輝いても、自分がそのような変化の軸ではないと理解したからだ。
もう話すことはない、一斉射撃をけしかけようとするも…デベルが盾となり人間側を守りに入る。それでも躊躇なく射撃を命じるフィラヴァンドレル。突如浮遊しながら移動するリルがあわられる…金髪で燃える目をした光り輝く魅力的な女王!(痩せた農家の娘ではなくなっている)
「ダナ・メブ」跪(ひざまず)くエルフたち。白髪のエルフはリルと無言で意思疎通。「一緒に来てほしい。永遠なる者よ、われわれからあなたへの愛を奪わないでくれ。それがなければ死んでしまう」リルは首を振り、無言で山脈を指さす。この場を発つ準備をするエルフ。トルヴィエルは無言で象嵌細工のリュートをダンディリオンへ渡す。微笑む吟遊詩人
「ウィッチャー、お前の言うとおりだ。言葉は必要ない。さらばだ、ふたたび会う日まで。」長い間二人は無言で見つめ合った
【ドル・ブラサンナ】解説書によると…現在の統治者はエルフの魔術師「イニッド・アン・グレアナ(フランチェスカ・フィンダベア)」で参謀長は「フィラヴァンドレル・アイン・フィデイル」。後者は青色山脈の自由エルフ同盟の長でこの小説にも登場しているエルフだ。2世紀の間エイダーン王国の支配下にあった地がエルフの手に戻ったのは第二次北方戦争のあと。ニルフガードと北方諸国の間で結ばれた平和協定条項のひとつとして「独立領」と定められたとき、とある。エルフはこの地を取り戻したようだ
今回は時系列順の単純なお話でした。なのでタイムラインはなし。それにしても、白髪エルフは態度急変しすぎだろう…散々なじっておきながらその態度はどうなのよ。ビックリ仰天のなじりっぷりは原作を読めば味わえます(笑)
【まとめ】ダナ・メブは豊穣の女神のような存在でした。彼女がこの地に留まるおかげで一年中花が咲き乱れ実りの良い状態が維持できている仕組み。リフィア(リル)は永遠なり、ときの終わりが訪れるまで。
ドラマ版「世界の果て」との違い
Netflix・1stシーズン 第2話「4マルク」
ゲラルトパートで語られるヤスキエル(ダンディリオン)との出会い。ドラマ版ではデベルやエルフたちとのやりとりに違いはあるが大きな相違はない
【細かな違い】
エルフの長は直接手を下さないし(ゲラルトに剣を抜かず、若いエルフたちに射殺させようとしていた)、デベルは見かねて縛られたウィッチャーと人間の前に立ちはだかり「盾」になった。それでも躊躇することなく「やれ」と言い放つ小説版のほうが「筆者の思い描くエルフ」像と重なり合点(がてん)がいった
ドラマ版は良いエルフなのよね。自分たち以外の生物への見下しが物足りない。このシーン、小説は「ダナ・メブ」の登場で流れが変わりますが、ドラマ版は彼女が存在しないので仕方がないのかもしれない
【ドラマ版】「世界の果て」と同時に「醜いイェネファー」が美魔女になる経緯が展開される。『ウィッチャー3』から遊んでいるとあのイェネファーが!?と衝撃をうけるシーン盛りだくさん。一部では高慢チキで自分勝手な女とレッテルを貼られていますが…気になる今後!
理性の声6
少しずつ明かされるイェネファーの情報&ネンネケさんに甘える?ゲラルトおじさんの回
ダンディリオンはこの場に居ない。洞窟のような場でネンネケと語らう。2か月前寺院に来たイェネファーと口論になったのですぐには戻ってこないだろうと
「あと数日は発たないで」「いや、そろそろ出発する」「そんなに急ぐのは、ここで彼女に見つかるのが怖いから?」「そうだ」
イェネファーが自分のことについて何も尋ねなかったことに不服のゲラルト、治療法を求めてきたんだろう?ヴィジマのストリガ退治で稼いだ宝石をイェネファーに渡して欲しがる
「あなたはもはや何かを修復できる立場でも、改善できる立場でもない。あなたは彼女から逃げた、その振る舞いはおとなの成熟した男にふさわしいとはとても思えない。その罪を宝石で償おうなんて、これほど我慢のならない男の類はないわ」
独占欲が強すぎる、耐えられなかったとこぼすも「泣きつくな」と一喝(笑)どうやらイェネファーは不妊治療を受けにここ=メリテレ寺院へやって来たようです。しかし治療法は存在しないのだった
女魔法使いは卵巣が退化し、永遠に子供が持てない存在です。ここでゲラルトは「なぜ彼女はあるはずもない治療法を探し続けるのか」とその執着に疑問をぶつける。が自分も「ふつうの人間になれやしないのに今もそうなろうとしている」ことに気づかされてしまうのだった。う~ん…似た者同士
発つ前にトランスを受けろ、というネンネケに対し「予言が始まるかもしれない」未来を知りたくないと断固拒絶するウィッチャー。もういいと愛想をつかしつつそれじゃあ、とイェネファーとの出会いを聞きだす
「何があったのか話そう。だが夕食のあとだ。腹が減った」
≪登場人物≫
ネンネケ:メリテレ寺院の巫女。洞窟で薬草の手入れ&収穫をしているところ。そばでは未だ未回復のウィッチャーが暇そうにしている
【短篇集I・残りの章はあと1つ】まったり更新中
>>ウィッチャー 一粒の真実 小さな悪 値段の問題 世界の果て 最後の願い

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